花の名は、ダリア
上ったモノとは別の階段を下りたダリアは、大きな窓に囲まれた広い部屋に足を踏み入れた。
今は全て開け放たれた、金色のフリンジがついた赤いカーテン。
至るトコロに配置された、豪華な猫足ソファー。
ゴテゴテした縁取りの鏡や、ゴテゴテした額縁に入ったバロック調の絵画が掛けられた壁。
ベルサイユ風サロン?
ダレかさんのこだわりが光るなぁ…
口元に手を当てて、クスクス笑いながら歩き回っていたダリアは…
「あら。
サム、いたの。」
窓に向かって置かれたソファーにグッタリと寝そべるサムを発見して、ピタリと足を止めた。
ヴァンパイアの超再生能力のおかげで傷など一つも見当たらないし、着替えも早々に済ませたようで、すっかりいつものマダムキラーに戻っている。
が、その顔色は、夜目にもわかるほど蒼白だ。
「…
どうかしたの?」
ダリアは訝しげに小首を傾げた。
その愛らしい仕草に、サムは苦笑する。
ついさっきまで、アンタの今カレにヤられてたンですYO!
そりぁあもう、おっそろしい目に遭ってたンですYO!
未だに心が折れっぱなンですYO─────!!