花の名は、ダリア

枕に肘をついて上半身を起こしたダリアが、俺の顔を覗き込んだ。

頬を掠めるシルクのような金の髪が、少し擽ったい。


「当たり前のように暮らして。
行きつけのダイニングバーやマーケットが出来て。
ご近所付き合いしたりもして…
そんな生活はいかがです?」


なんてコトを言いながら腕を伸ばし、ダリアの小さな頭を抱え寄せて額にキスすると…


「…
考えたコトもなかったわ…」


彼女はそう呟いて、俺の胸に身を預けてきた。

親に縋りつく子供のような仕草が、どうしようもなく庇護欲をそそる。

不安がることなんて、何もないンだよ。


「大丈夫、騒ぎになんてなりませんよ。」


「‥‥‥そう?」


「そう、そう。
ヤバくなったら、いつものように記憶を奪って消えればいいンですから。」


「‥‥‥そう?」


「大体、貴方には俺がついてるンです。
俺がいて、どーしよーもないクソみたいな事態に陥ったコトなんて、なかったでしょう?」


「なかったわ。
そうね、ソージが一緒なンだものね。」

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