狂愛
現在
「パパ〜!パ〜パ〜!」
昨日の酒が抜けきらぬ体を、娘の絢香が激しく揺する。

今日は久し振りに家族で自然公園にピクニックに行く日だった。

正直、寝かしてくれと心の中で叫びながらも重い身体を起こし洗面所に向かう。

最近は特に家族の時間をないがしろにしていた為、泣く泣く準備をはじめた。

「あなた!シャツどれにする?」

妻の唯が追い打ちをかけるよーに声を掛けてきた。

「頼むしゆっくり用意さしてくれよ!」

しまった...。

案の定、母娘が同じ顔でこちらを睨み付けている。

「すみません。」

およそ、一家の大黒柱とは思えぬくらいに細い声であやまりながら、急いで用意を終わらせた。

これも自分が蒔いた種...そう自分に何度も言い聞かせた。

休日とゆう事もあり、公園は親子連れで相当な賑わいだ。

みんな、ボール遊びやバトミントンなど平和を絵に描いたような光景である。

公園に着いてからの絢香のハシャギようには目を見張るものがあった。

首輪でも必要かと考えさせられるくらいだった。

その姿を見て、如何に自分が妻と娘に対して何もしてやれてないかを痛感させられた。

「絢香〜、お薬の時間やで〜!!」と、唯が呼びつける。

しぶしぶ唯に近寄る絢香の顔は今にも泣き出しそうなくらいに暗い。

実は絢香には生まれついての持病があった。

しかも、先天性の特定疾患であり治療法も見つかっていない。

染色体に問題があるらしく、薬の処方を忘れるとスグに全身が痙攣しはじめ呼吸困難におちいる。

2歳の絢香は、今は薬を飲んでいれば周りの子供達と変わりない生活を遅れるが、3年後に生きている確率は10%に満たないらしい。

定期的に病院には通っているが未だに有効な治療法が見つからず、毎回落胆しながら帰るよーになっていた。

最近では治療法が見つかる事よりも、残りの人生を如何に意味のあるものにしてあげるかなどと考えてしまうようになっていた。

現在僕は、3年前に友人と立ち上げた会社のCEOを務めている。

社名は株式会社フューチャーズ。

表向きには人材派遣や飲食店経営、他にも旅行代理店などを生業とする会社である。

しかし、実際には裏の業務で稼いだ金を綺麗にする為の会社。

いわば、マネーロンダリングのお手伝いを行ない裏稼業の方達から手数料を貰っている会社である。

したがって、偽の領収書や帳簿を作成するだけが仕事なのだ。

しかしながら、この仕事を続けていくにあたって必要不可欠なのが得意先との付き合いである。

ほとんどが裏稼業か、もしくは半グレと呼ばれる人達が得意先な為に夜の付き合いが多い。

週に3・4日は夜中まで付き合いで飲みに出かけている。

その為、絢香が起きている時間はほとんど家に居られないのが現状だ。

唯には絢香の事も任せっきりになっているが、頑張って稼いできなさいといつも笑顔で背中を押してくれる唯に本当に感謝している。

僕自身マトモな仕事ではないと自覚していたし、少し稼いだらスグに足を洗うつもりにしていた。

だが絢香が産まれ、治療費の事を考えると到底サラリーマンの給料では追いつくはずもなく。

現在もその仕事を続けているのである。

< 1 / 2 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop