褐色のあなたに水色のキミ
「そうですか…。職場が中津なんで、実家から近いし、実家暮らしです」


「へぇ…」


なんともコメントし辛くて、呟くように言った。


「この歳で、実家暮らしの男って、ヘンですか?」


思いもよらない質問をされ、返答に困った。タイミング良く、注文した飲み物が運ばれた。そのままスルーしようとしたのに、彼の視線を感じた。


「ヘンじゃないと思います…」


そう応えると、カプチーノを口にした。一誠さん以外の男性と…偶然…とはいえ2人っきりでカフェにいるなんて、それこそ久しぶりだから、緊張する。


「良かった…。あの…」


目が合うと、何を言われるのかとドキドキした。真昼の逢瀬を、目撃されたんやないか…と。


すっ…と、視線を遮るように差し出された名刺。軽く会釈をして受け取った。


『株式会社 春日園 梅田支店
ルートセールス
福岡誠人』


「福岡…さん」


今、知ったばかりの名前を小さく呟くと、福岡さんは照れくさいのか、アールグレイを慌てて飲もうとして、小さく「アチッ」と呟いた。



< 48 / 84 >

この作品をシェア

pagetop