*とある神社の一人ぼっちな狐さんとの、ひと夏の恋物語*

「残念ですが____」
そんな言葉で始まった医者の言葉。
「・・・ありがとう、ございました。」
頭を下げる私。
顔を上げると、その医者は労わるような顔をしていた。
”可哀そうに。”
そんな言葉が聞こえてきた気がした。
「顔を・・・見ますか?」
「はい。」
気づけば反射で答えていた。
「こちらです。」と医者が前を歩く。
歩幅を緩めているのは、この人の優しさだと思った。


ドアをあけると、
その病室にベットは一つしかなく、
窓の外からはただ雨音が響いていた。
医者がカーテンの前に立ち、「どうぞ。」と私に言ってその部屋から出た。
その気遣いに、心が温かくなる。


カーテンをあけると、そこには白い布を顔にかぶせたお母さんの姿。
恐る恐る、少しずつ、その布をめくる。
その手はもう震えてはいなかった。
「・・・お母さん。」
呼びかけても、反応がない。
あたりまえなそれに、心が締め付けられる。
でも、涙は出なかった。
「涙・・・でないや。
ごめんね、お母さん。
私・・・親不孝者だね・・・。」
そっとお母さんの頬に触れる。
その頬には火傷らしい跡があった。
「私、これからどうやって生きればいいのかな。」
ポツリ、ポツリと呟くそれ。
考えるより先に答えが出る。
涙は最後まで出ないままだった。
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