狂い狂ってまた明日
狂い始める日々
平凡、という言葉が私にはよく似合うだろう。
特に何も特化している物が無く、何か特別に悪いという物でもない。
特筆するものもない。
集団行動の中で取り残されるのは、何かが特別出来ないものでは無い。全てにおいて平凡な人、つまり私だ。
なので私は友達が殆ど居ない。
寂しくないの、と言われたことがある。
それでいい。と答えた。
だって私は充分楽しいのだから。







四月。
今日から高校二年生になる。
二年生になるからといって何かが出来る様になったりする事はない。
いつもと同じ、私だ。
校門の前に貼り出されているクラス表を確認した。
四組。
クラスのメンバーを見ても誰が誰だか分からない。それでいい。前のように一人で淡々と生きてやる。
コツコツとローファーを鳴らし歩き出した。
ふと、騒がしいと思い、目を声がする方に向けてみた。
女子が何かに群がっている。
「○○くーん」「同じクラスだねっ!」
歓声からすると何かとは...男だ。
正直こういう光景は嫌いだ。よくそんな恥ずかしい事が出来るな。
それに男も男だ。それはモテない私への当てつけなのか。そうなのか。
無性に腹が立って、私は歩くスピードを早める。
ちらっと男の顔が見えた。
(こんな顔の奴ジャニーズにゴロゴロいそうだな)
確かに格好いい。
でも正直...
「私のタイプじゃない」


教室に着くと、席を探し座る。
「うきょぉー!!同じクラスだねっ!!」
「美香...」
いきなり抱き着かれよろめく。
抱き着いてきたのは美香。音楽の授業で一緒になって仲良くなった...と思っているのはあっちの方だ。正直私はこいつが嫌いだ。
自分のペースを乱されるし、うざい。
「右京!またヨロシクね!」
「...うん」
適当に返事をしておく。
幸いこいつと席が離れているので関わりは少ないことを信じたい。切実に。
席に戻ると、何故か女子が異様に群がっていた。
私の隣に座っているのは...。
(朝のモテ男!?)
最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ。
もう神様は私のことが嫌いなんだろう。何でこんな事になった。
生理的に受け付けない男子を目の前に私はうろたえる。
もう嫌だ...。
私が絶望のピークに達したと同時にチャイムが鳴る。
それと同時に女子達がよけていったのでやっと席に着くことが出来た。
すっかり力の抜けた足を投げ出し、深く椅子にもたれ掛かる。
疲れた。
早く家に帰りたい。
「具合悪いの?」
突然声を掛けられビビる。
「俺が保健室まで運んであげようか?」
「...」
隣のモテ男が心配そうに私をのぞき込む。
このエセホストめ。
「ねぇ、黙ってないでちゃんと言って?俺、分かんないでしょ?」
イライラのピークに達してもいた私は、さらに目付きが悪くなる。
「...別にお前に知られる権利無いし」
「なんで?だって険しい顔してるよ?どこか痛いんじゃないの?俺、困ってる人は放っておけないんだ」
にこっと王子様スマイルを向けられる。それに周りの女子は悲鳴をあげた。全く、今のどこにそういう要素があった?
「...お前に心配されても迷惑」
「なんで...君はそんなに悲しい事言うの?」
今度は目に涙を溜めて私を見つめる。心なしか周りの女子からの視線がキツくなった気がする。
「だってお前が嫌いだから?」
「てめぇふざけんじゃねぇぞ!!」
女子の一人が私に怒鳴る。こいつは怒鳴っただけで怯むと思っているのだろうか。
するとモテ男は笑い始める。
「はっはっ。初めてだよ。俺がこんなに口説いても落ちないの。君、面白いねぇ」
「何悪い男が吐くようなセリフ吐いてんの」
けっ、とモテ男を見下し自分の机に向き直る。
「あっそうだそうだ」
こんなに突き放されてもまだ話し掛けてくるのか。こいつの精神力はどうなっているのか。私は不思議でならない。
「君の名前、聞いてなかったよね。俺はアサクラケイト。浅いの浅に、倉庫の倉でくら。ケイトは恵むに人と書いて恵人」
またにこっと微笑む。綴りまでご丁寧に教えてくれた。
私はそっぽを向いてぶっきらぼうに答えた。
「アイゼンウキョウ。相性の相に前で相前。右に京都の京で右京」


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