星降る夜に。
ここで外すのも不自然だし、私の首元にすっかりなじんでいる大切なものだから。






お昼時を過ぎた定食屋さんは空いていた。

ここは就職したときから通っていて、うちの社員ご用達でもある。
私はミックスフライ定食、大輔さんはロースカツ定食を注文した。



「大輔さん、どうしてここに?」


「莉子から一向に連絡が来ないから。ちょっと近くまで来たついでに寄ったら、事務のおばちゃんに声かけられて。莉子がいるか聞いたら、もう昼休みだから待ってろって言われてさ。それだけ」



それだけ、って…。

大体、近くまで来たついでなんて嘘っぽい。大輔さんは接客のはずだし、こっちまで来る必要なんてないだろうに。



「それから一つ、聞きたいことがあって。その指輪、店に来たときから気づいてた。莉子と知り合ったとき、結婚はすでに決まってたのか?」


「…はい。結婚が決まっていながらリゾートに行って、大輔さんと知り合って、一緒に過ごしました」



大輔さんは表情一つ変えない。
軽い気持ちで大輔さんと過ごしたわけじゃない。だからといって全てを捨てる覚悟があったかといったら、そこまで考えていなかった。
ただ、どうしようもなく惹かれたんだ。
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