星降る夜に。
「…あれ?莉子?」



私を見つけた誠さんが手を振りながら、小走りでやって来た。営業マンだからどこにいてもおかしくない。

私は笑顔を作る。上手く笑えているといいけど…。



「どうしたの、こんなところで」


「ここのジュエリーショップにね、集荷に来てたの。ドライバーがみんな忙しくて」



大輔さんがどんな表情をしているのか気になるけど、見ることは出来ない。

私はここに仕事で来ただけ。ただそれだけ。



「ここ、若い子に人気があるところなんだよ。うちの雑誌でもジュエリー特集の記事が載ってたし。私、高城出版営業部の高城誠と申します」


誠さんは名刺ケースを取り出すと、大輔さんに名刺を差し出した。彼はベストのポケットから名刺ケースを取り出す。



「吉岡大輔と申します。ここの共同経営者をしております。肩書きは専務なんですが。失礼ですけど、宮坂さんのご婚約者の方ですか?」



大輔さんは何事もないように、接客中と同じにこやかな表情をしていた。
私はそっと誠さんの隣に立つ。このほうが自然だろう。
私はこの人と結婚するんだから。
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