星降る夜に。
最初は愛のない始まりだったけれど、そのうち彼を好きになった。好きだから結婚を決めた。
不満なんてない。でも…。



「泊まって行ってほしいけど、莉子は明日も仕事だもんね?」


「うん。旅行から帰ってきたら泊まりに行くから」



私のバッグの中のスマホはうんともすんとも鳴らない。

大輔さんからもしかしたらメールがこないかと期待していた。
今日会えなくなってしまった分、誘いの連絡がこないかと、そう期待していた。


だけどそんなの来なくて当然なんだ。大輔さんだってきっと、私が誠さんと一緒にいるであろうことは予測しているはず。
来週まで期待するのはやめよう。


今でも大輔さんのあの言葉が耳に残っている。



『莉子はあの男のものなのか』


聞いたことがない、低くて怒りに震えた声。

大輔さんがどんな感情でいたのだろう。


誠さんのことを知った今でも、私のことを好きでいてくれるのだろうか…。




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