ためらうよりも、早く。


そもそも誰に愚痴れって……?――アホらしい、当の本人に話すヘマなんかしない。



「なあ柚希、いい加減に結婚したらどうだ?」

「いやよ」

テーブル・コーディネイトを習うほど女子力の高い母によって、今日もダイニング・テーブルは品良くオシャレに彩られている。


もちろん食事の内容も華やかさに負けず劣らず。かといって気取っているわけではなく、栄養ばっちりかつバランスの取れた品々を作ってくれる。


食事を共にして家族の時間を大事にしてきたという母。そんな時間をぶち壊したのは、冒頭の言葉であった。


「あのなぁ。黙認はしてきたが、そろそろ落ち着く時期じゃないか?」

「気にしていたの?でも、私は落ち着く理由が見当たらないわ」

「ほ、ほら、セフレ?よりも、早くひとりに絞って……」


この時間が楽しいものでありたい母は現在、奥のキッチンで父用のグリーン・ジュースを作っているので席を外していた。


こんなタイミングを狙い撃ちするあたり、やはり父は母には弱い。……まあ、名誉のために惚れた弱みとしておこう。


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