Revive

眼帯をした男子





「今日うちのクラスに転校生が来るらしい」


僕と同じ制服を着た生徒達の声が後ろから聞こえてくる。
僕は学校へ向かって1人で歩き続けている。
このままいけばあと10分ほどで着けそうだ。
さきほどから僕の後ろを歩いている男子生徒達が、
今日来る転校生の話ばかりしているので、僕は振り向いて、
『僕が転校生の空野翼です』と自己紹介してしまおうかと一瞬思った。
そんなことを考えながら歩いていると、
道の真ん中にノートが落ちていることに気が付いた。
すると、後ろを歩いていた男子生徒もノートに気が付いたのか、
「あそこにノートが落ちてないか?」
と言い出した。僕は道に落ちている物を拾うことなどめったにないのだが、
気が付いたら走ってそのノートを拾い上げていた。
まるで、このノートに引き寄せられたような、そんな感覚だった。
そしてノートに何が書かれているのか少しだけ見てしまう。

【私には好きな人がいます。

彼は、優しい瞳をしています。

晴れた日の、

青い空を見ると、

いつも彼のことを思い出します。

彼は綺麗なブルーの瞳をしています】


僕はそこまで読むと急いでノートを閉じた。
見てはいけないものを見てしまったらしい。
とても綺麗な字で書かれていた。女性の日記のような物だろうか。
僕はその時、今女性の間で「恋ノート」が流行っていると
前に朝のテレビか何かを見て、聞いたことがあるのを思い出した。
あまり詳しくは覚えていないが、
交換ノートではなく、恋ノートだ。
自分の好きな人についてノートに書くと、
いつかその恋が叶うとか何とか言っていたような気がする。
こんなノートが流行るなんて・・・。
交換ノートのほうがまだマシだ。
僕はしばらくその場で立ち止まっていると、
さきほど後ろにいた男子生徒達が僕のことを見ていることに気が付いた。

「何のノート?」

男子がそう言うので、僕は戸惑った。

「これは・・・・・・」

僕はそう言うとノートを見つめる。

「見せてみろよ」

そう言われたが、これを渡してはいけないような気がした。

すると、男子は僕の顔をジロジロ見てきた。

「お前、1年か?」

そう言われたので、僕は首を振る。

「2年だけど・・・」

僕は言った。

「2年!?こんな奴いたっけ?」

男子達は顔を見合わせた。


「あ!転校生です!
僕が、転校生の空野翼!」

僕は自分を指差して無理矢理笑ってそう言ってみると、男子達は驚いて僕を見た。
しばらく沈黙が続いたような気がした。 
その時、背後から別の声がした。

「へぇ・・・お前が転校生か。」

とても、冷たい声だった。
その声を聞き、僕の前にいる男子達の顔色が変わっていった。
僕は少し怖くなって振り向くと、そこには同じ制服を着た男子が立っていた。


右目に眼帯をしていた。






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