Revive

本当の兄




僕は放課後になると1人で家に向かった。その途中、
携帯を取り出して、新一さんが僕に渡してきた小さな紙切れを見ていた。
夢野の家から出る前に渡されたこの紙切れは、
最初は気付かなかったが、よく見ると電話番号が書かれていたのだ。
ここに電話すれば新一さんに繋がるだろう。
新一さんがこの紙を渡してきたということは・・・。

僕はこの番号にかけてみた。

「もしもし」と、電話越しから聞こえてきた新一さんの声。
僕はホッした。

「新一さん。空野翼です」

僕は1度、新一さんと話がしたかった。
もちろん、夢野のことについてだ。
すると新一さんの方から今から会おうと誘ってきた。

「もうすぐ仕事が終わるから、車でそっちに向かうよ。
今どこにいる?」

僕達は電話で、これから会う約束をすると電話を切った。
僕は辺りを見渡した。
夢野はいない。
最近は1人で帰ることが多くなったし、
夢野がどこにいるのかは分からない。
できれば新一さんとは2人きりで話がしたい。

僕は待ち合わせた場所で新一さんを待った。
待っている間、新一さんに話したいことを頭の中で整理して
まとめようとした。

その時、黒い大きな車が僕の前に止まって驚いた。

車に乗っていたのは新一さんだった。


「やぁ。空野君。体調は大丈夫かい?」

僕が車に乗ると新一さんはそう言った。

「はい。大丈夫です。この前は本当にありがとうございました」

車は僕の知らない道を走り、そしてある店の前で止まった。
僕はよく分からないまま新一さんについていった。
新一さんと僕はオシャレな店の中へ入り、
そして個室へと案内された。

「ここは俺のお気に入りの場所でね。
仕事仲間と来るときもあれば、1人で来て
お酒を飲むことが多いんだ」

新一さんはそう言うと笑顔で僕を見た。

「もちろん、今日は飲まないから安心して」

僕は周りを見渡す。
ここなら誰かに会話を聞かれる心配がない。

するとノックの音が聞こえ、女性が部屋に入ってきた。
コーヒーを僕達の前に置くと、すぐに出ていった。
新一さんはコーヒーに砂糖を入れる。

「それで・・・何か俺に話したいことがあるんだろう?」

新一さんは、僕が今何を言いたいのかほとんど分かっているのだと思った。



< 42 / 82 >

この作品をシェア

pagetop