Revive

はじめての恋



次の日僕は、恋ノートを鞄に入れて登校していた。
僕がこのノートを持っていても仕方がない。
廊下に落ちていたと嘘をついて先生に渡すのも良い。
僕が教室に入るとさっそく田口と磯谷がやってきた。
授業以外の時間はほとんどと言って良いほど
この2人と一緒にいるような気がした。
授業が終わると2人はすぐに僕の所にやってくる。
田口と磯谷にサッカー部に入らないかと誘われたり、
秋山千尋の話や、今日ある小テストの話など
転校生である僕の知らない話を色々と話してくれた。
そんな繰り返しだった。

もちろん、田口と磯谷以外の生徒とも話すこともある。
しかし、3人で行動することがほとんどで、
いつの間にかそれが当たり前になってきた。
僕は、恋ノートを先生に渡すことを忘れていて、
その日からずっと鞄の中に入れたままにしていた。
というより、恋ノートの存在すらいつの間にか忘れてしまっていた。

僕が転校してきてちょうど1ヵ月たった頃、
授業中に思いっきり居眠りをしてしまった僕は、
チャイムの音で目が覚める。
僕がしばらくボーッとしていると、隣の秋山が紙を差し出してきた。

「今日の授業の内容、
先生がテストに出るって言ってたところ・・・
空野君の分も書いておいたよ。」

秋山はそう言うと僕を見て微笑む。

「あ、ありがとう」

僕は紙を受け取ると、秋山はしばらく何か考えるように黙りこむ。
そして、僕にしか聞こえない声で

「今日、一緒に帰らない?」

と言ってきた。僕は耳を疑った。
しかし、聞き間違いではなかった。
なぜ僕なのか、と一瞬思ったがとりあえず頷いた。
そこから僕の頭の中は帰りのことでいっぱいになる。
僕が秋山と一緒に帰ることになったことを田口と磯谷が知ったら何て言うだろう。
いや、他の男子達もそうだ。
一緒に帰っている所を見られたら噂になるかもしれない。
もしかしたら秋山は、僕がいつも1人で帰っていることを知っているのか。
僕はとりあえず、その時を待つことにした。

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