Revive

目覚め





ゆっくりと目を開けると、今度は病院だった。
僕は病院のベッドの上にいた。
ここが現実の世界だとすぐに分かった僕は、嬉しさのあまり起き上がろうとするが
お腹のあたりが少し痛んだので再びベッドに横になった。

「目が覚めたか!」

僕が寝ているベッドの横に父親がいた。

「ちょうど今、夢野君が帰ったばかりなんだよ。
何度もお前の名前を呼んでいたんだぞ」

父は座っていたイスか立ち上がってそう言った。
僕の名前を呼ぶその声はしっかりと聞こえていた。

「あの声は夢野の声だったんだ」

夢野がさっきまでここにいたと思うと、
僕は嬉しくて堪らない気持ちになり、少しだけ微笑んだ。

「お前が刺されたって話を聞いた時、
正直どうなることかと思ったよ・・・。
傷口が深くて、結構な出血だったらしいんだ。
夢野君が早く救急車を呼んでくれたこともそうだが、
1番は、輸血・・・」

輸血という言葉を聞き、前に父が
僕の血液型についての話をしてきたことを思い出した。

「前に、お前の血液型は普通とは違う、
貴重な血液型だという話をしたことがあるな?」

僕は頷いた。

「言ってたね・・・たしか・・・」

僕が思い出そうとする前に、父が「ボンベイ型」と言った。

「ボンベイ型の場合、輸血できる血液は同じボンベイ型だけだ。
これは、場合によってはすぐに確保できるような血液ではないと、
お前には話してあるはずだ」

父はそう言って僕を見下ろした。

「夢野君も、お前と同じ血液型だったらしい」

僕はそれを聞き、ベッドから起き上がった。

「じゃあ輸血は・・・夢野が・・・!!」

僕はまだ自分と同じ血液型の人に出会ったことがなかった。
それくらい珍しい血液型らしいのだ。
だからこそ、何かあった時はとても危険だと父は言っていた。
しかし僕はそう言われても、あまりピンとこなかった。
血液型の重要性をちゃんと理解していなかった。
夢野がもし僕の側にいなかったらと思うと、急に恐ろしくなった。

「お前を刺したのは伊達君・・・と言っていたかな?
彼は捕まった。お前を刺したあと、すぐに逃げたと
夢野君が教えてくれたよ。」

伊達が逃げたと聞き、僕はあの時のことを思い出した。
たしかにあの時の伊達はかすかに震えていたようにみえた。
伊達は本気で僕を殺そうとしたのだろうか。
今まで隠してきた伊達の真実がみんなにバレてしまったのだから
伊達にとっては僕が許せなかったのだろう。
しかしこれは青木直弥のためだ。

「お前と伊達君との間に何があったのかは知らないが、
私はこんなことでお前を失いたくはない。
こういうことになれば、お前は普通の人よりも
命の危険が高まるということを忘れないでほしい」

父の言葉に僕は小さく頷いた。

「でも、こうするしかなかったんだ。
夢野やみんな、青木のためには、こうするしかなかったんだ。
僕は、間違っていたのかな?」

こうして病院にいる僕は、もしかしたらもっと他にも良い方法があったのかもしれないと考えてしまう。

「いや、きっと正しいのさ」

父は僕の頭に手を置いた。

「だからお前は今、ちゃんと生きてる。
私の言った「人と人は助け合い、支え合いながら生きていく生き物」という言葉は。
間違っていたかな?人が、1人だけでは生きていけないことを実感するのは、
とっても大事なことなんだよ。今のお前は、ちゃんとそれを分かっているだろう?」

父の言葉は何も間違っていなかった。




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