【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
結局そのまま1日を過ごすことになった。

キノはまるで怪我人のように左腕を右手で覆いながら授業を受けている。


一時間目は数学だ。


隠れるように頭を下げてるキノを見てすぐに察する。

さては予習してないな。



「えーと、今日は18日、木野ー前来て解けー」


なんと運の悪いキノ

てか今日当たるって分かってただろうにバカだなぁ


キノは一度だけ私の方を見た気がした。
私も別にノートを隠したりしなかった。

さすがに怒られるのかわいそうだし


キノは黒板の前に来て左手にチョークを持って書こうとした途端動きが止まった。


そう、私が文字を書いたのは
キノの利き腕の左だから

あんな高々と腕を上げたら丸見えだもんね。


キノの考え込む姿は皆から見れば問題を考えてるかのように見えるけど

私だけがほんとのことを知っていて
笑いを堪えていた。

さあ、どうでるキノ?


恥を捨てて左手で書く?

それとも…



そのとき
キノはチョークを右手に持ちかえると黒板に書き始めた。
左手は腹のあたりにあって見えない。


けど
キノ両ききじゃないよね?


「おい、もっと綺麗に書け」


そりゃ利き腕じゃない右手で書いたらそうなるよ。

ぐにゃぐにゃの字でキノが書くと先生が注意した。


キノは苦笑い


「そういえばお前左利きだったろう。なんで右手で書く」


更に追い討ちをかける先生
キノはえーーーっと、と間を持たせると


「けが…したんで…」


「それは腕に書かれている文字と関係するのか」


先生確信犯!いいね!

キノは諦めて左手に持ちかえるとさらさらと書き始めた。

そこで皆どっと笑い声をあげた。


席に帰ってくるなり私を怨めしそうにこちらを見るキノに笑顔で返した。

やっぱキノ好きだわ



「タカのバカ人でなし」


「キノ好きだよ」


「嬉しくねーし」


膨れるキノ

だけど腕は相変わらず隠してる。

そのあとの授業で見事に今日の日付で当てられるキノは何度も笑われながら黒板に手を伸ばしていた。


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