【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―



すっかり暗くなった空には小さな星がちらほらと見えた。


キノは今

いつかキノの言っていた家族と一緒に居るんだ。

キノは大丈夫だろうか。


真さんは心配しなくていいって言っていた。

キノのお母さんはキノをちゃんと育てられるように、釈放されたあと、また、別の人と結婚したらしい。

相手はすべて知った上で受け入れてくれた優しい人だって。


キノはきっと

失った家族の時間を取り戻そうとしてる。


血の繋がった家族を、やっと愛せるかもしれないんだ。


そんなところに上がり込んでいくほど、私も野暮じゃない。



もう、これっきりだ。



道宮宝の詮索も、もうやめにしよう。


もう、キノには関わらない方がいい。



彼の時間を
邪魔しちゃ悪い。



会いになんていけない。






「…フーちゃん?」


「ん?」


「泣いてるの…?」


「泣いてないよ」


「…うん」



頬を伝う何粒もの涙を
拭き取ることもせずに、

さっきよりもくっきりと光を放つ星を見上げた。


愛しい存在を失った。

今ではもう届きそうにない場所にいる。



だけどキノの大切な人は

永遠に届かない場所にいるんだ。


あの星よりも近づきがたい、もっともっと遠い場所に。


それなのにキノは
忘れられないでいるんだ。


私は、

忘れられるのだろうか。



真っ暗な夜なのに


星はまぶしいくらいに夜道を照らしてくれていた。



長い長い夜道



ちゃんとたどり着けるといいけれど。

私の行くべき場所に。



キノを忘れられるように。

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