恋人は高校生組長
父さんが出かけた時のことは、はっきりと覚えている。





『行ってくるぜ、ルリ』



ぴかぴかに磨かれた革靴に足を突っ込みながら、父さんは微笑んだ。



『うん……でも、早く帰ってきてね』

『バカ野郎、弱い顔すんじゃねぇぞ』




甘える私に、父さんはいつも通りの笑顔で笑ってみせた。




『今日からお前が組長なんだからな』









その日、私は組長の名を譲られた。

まだ15歳のコドモ、それも女に組長の座が明け渡されるのは、白虎組創設以来初めてのことだった。


父さんが外出したのは、その直後だった。





大きなことが終わったばかりなのに、父さんは、いつも通りの笑顔のまま家を出ていった。







たぶん、父さんは、分かってたんだ。






…………自分が死ぬってこと。
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