元カレ。【短編】

奇妙な再会

「ったく…なんでお前がこんなとこにいるんだよ!」

コンビニの棚に寄り掛かり、床にどしりと乱暴に腰をおろして男が吐き捨てる。

「やっちゃんこそ、何やってんの…。」

香奈は相手の正体に確信をもってつぶやく。どこかで聞いた声だと思っていたのだ。

「見りゃわかるだろ!?強盗してんの!コンビニ強盗!」

「お金無いの?」

「あったらしねぇよ!こんなこと!」

「こんなことする前に、言ってくれたらよかったのに…」

「はぁー!?んな恥ずかしいこと、元カノに言えるかっつーの!かっこわりぃ…」

拗ねたような男のくちぶりに、香奈は相変わらずだと思った。


男の正体は伊藤靖史(イトウヤスシ)、23歳。

香奈が2年前まで付き合っていた、いわゆる元カレだったのだ。


香奈がさっきまで思い出していた、夏の思い出、そこに存在していた人物。無性に会いたいとは思っていたところだった。

が、さすがにこんな形では、再会したくなかった。


人生ってのは、何がどうなるか判らない。
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