恋のカルテ

「おい、暴れるなよ」

いいながら佐伯先生は、バタつく足を押さえるように私の太腿の上に跨って、両腕を引き上げた状態で手首を掴む。

これじゃもう、逃げられない。

「放してしてください」

「だめ、放さない。恋人にフラれた責任を取れっていったのは、お前だろう」

「いいました、でも……ん」

これ以上は何も言わせない、とでもいうように塞がれた唇。そこから割り込んできた先生の舌は、私の言葉を絡め取り甘い吐息を吐かせた。

気を抜けば、飛んでいってしまいそうな意識の中で、私はまた考える。

どうしてこんなことになってしまったんだろうって。

だって、私と先生との出会いは、最悪なものだったのに。



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