委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 あてずっぽうだったが、当たりだったらしい。“僕”と言うのがしっくり来ないように、“母さん”と呼ぶのもしっくり来ない気がした。かつての俺は、“おふくろ”と呼んでいたのではないか。そう思って呼んでみたのだが、おふくろはそれに反応したようだ。


「悠斗。あなた、もしかして薬を……」

「ああ。飲んでない」

「いつから?」

「軽井沢へ行った時からだから、二週間ぐらい前かな」

「…………!」

「でも不思議なんだ。夜はちゃんと眠れるんだよ。薬なしでさ……」

「そ、そう? いつの間にか治ってたのね。不眠症が……」

「更に不思議な事に、薬をやめたら体の調子が良くてさ。それまではいつも体がだるくて、頭はボーっとしてたんだけど、なぜなんだろうね?」

「そ、それは……副作用ね、きっと」

「副作用? なるほどね……。でもさ、おふくろにとっては違うんじゃないか?」

「ど、どういう事よ?」

「え? おふくろにとっては、その副作用とやらが、実は目的だったんじゃないかって事さ」

「な、何を言ってるの? あなたは……」

「真琴から聞いたよ」

「……真琴さんから?」

「いい加減にしろよ!」


 あくまで白を切るおふくろに、とうとう俺は切れて怒鳴ってしまった。おふくろはビクッと肩を揺らし、目を泳がせて怯えたような顔をした。いつも自信に満ち溢れ、毅然としていたおふくろだけに、その変貌を目の当たりにした俺は、情けないような、悲しいような、そんな気持ちがした。

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