委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 私が振り返ると、その男子は足早に私に近付き、私を傘の中に入れてくれた。その男子は、相原君だった。


ああ、やっぱりこの人の声、あの人とそっくりだわ……


 私はぼんやりと相原君の顔を見上げながら、あの日の事を思い出していた。



『よかったら一緒に歩こうか?』


 あの日、田村悠斗さん……ううん、悠斗は、今日の相原君のように、私を傘に入れてくれた。そして、私にそう言ってニコッと笑ったのだけど、白い歯がとても印象的で、眩しいくらいだった。


『だ、大丈夫です』

『そうは思えないな。駅まで結構距離あるぜ?』


 確かにそうだった。走って行ったとしても、雨で酷く濡れてしまうのは明らかだった。


『遠慮すんなって。さあ行こう』

『すみません……』


 私は素直に傘に入れてもらう事にし、悠斗と並んで歩き始めた。彼はとても背が高く、私の背は彼の肩ぐらいまでしかなかった。

 当然ながら歩く歩幅も速さも私とは違うはずなのに、彼は私の歩きに歩調を合わせてくれていた。一見粗野な印象の彼だけど、優しいところもあるんだなと思った。そもそも、傘に入れてくれた事自体がそうだったのだけど。


『君、高校生だよね?』

『は、はい』

『やっぱりね。俺もだよ。東高の2年なんだ』

『えっ、ほんとですか?』


 私は思わず足を止め、悠斗の顔を見上げてしまった。だって東高と言えば、県内でも断トツに偏差値が高い進学校だったから……

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