失恋のその先に


「ちょっと大丈夫?」

「だいじょ~ぶ、だいじょ~ぶ」

「桜ったら飲み過ぎだよ」



里菜の声は耳に届くものの頭の中には入ってこない。足元もいつもよりフラフラしてしまってる。


でもこんな事は初めてじゃないし、これぐらい酔ってしまった方がぐっすり眠れるから私には丁度いいのだ。


帰るべく店を出た所で足がふらつき、見知らぬ誰かにぶつかってしまった。



「あ、すみません」



顔を上げればそこには見知った顔が。なんと永戸物産の工藤さんだ。偶然とは恐ろしい。



「相沢さん良かった。まだここに居たんですね」



まだここに居た…どういうこと?


なんとか記憶を呼び起こせば、たしか彼に電話で飲み会の場所を話したような…。



「えっと…どうしてここに」

「相沢さんに会いたくて。これからもう一軒どうですか?」



里菜は肘で私をつつき、行ってこいと命令する。でも今日はこのまま寝たいぐらいの勢いだ。


それに得意先である工藤さんと変な噂が立ち、仕事に影響が出るなんてことはなるべく避けたい。よし断ろう。

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