嫌われ者に恋をしました

「何に誓おうか?何がいい?」

 隼人は腕の中の雪菜の涙を拭いながら、じっと見下ろしてしばらく考えていた。

「何でもいいから、雪菜のお願いを一つ聞こうか?それでどう?信じてくれる?」

 何でも一つお願いを聞く?そんな、何を願えばいいんだろう。雪菜は首を傾げた。

「それでも信じられない?」

 雪菜は首を振った。

「じゃあ、何がいい?」

 深く考えたわけではなかったが、口をついて言葉が出てきた。

「煙草を……、止めてもらえますか?」

 隼人は少し目を見張ったが、すぐ微笑んだ。

「いいよ。じゃあ、今この瞬間から吸わない」

 雪菜は自分で言っておきながら、そんな急に実行することに戸惑いを感じた。

「そんな、無理しなくても……」

「いや、もう決めたから。もう吸わない」

 どうして煙草をやめてほしいなんて言ってしまったんだろう。雪菜は申し訳ない気持ちになった。

「……ごめんなさい」

「俺がお願いを聞くって言ったんだから、いいんだよ。その代わり、もう俺を信じること。わかった?」

「……はい」

 煙草をやめるのは大変だと聞いている。それなのに、あっさり「いいよ」と言われて雪菜は困惑した。本気だろうか?こっそり吸ってもわからない、とか思っているのだろうか?
< 111 / 409 >

この作品をシェア

pagetop