嫌われ者に恋をしました

 気がついたら出発してから1時間半も過ぎていた。そんなに長い時間車に乗っていたとは思えないくらい、あっという間だった。

 高速を降りて人通りの少ない夜の街を走っていくと、すぐに大きなマンションの下に着き、そのまま地下の駐車場に入っていった。

 こんな立派なマンションに住んでるの!

 雪菜は驚きを隠せず、目を丸くしてついうっかり「え!」と言ってしまった。

「どうしたの?」

「あ、いえ……。すごく立派なマンションだったので、驚いただけです」

「立派?まあ、家族向けだから大きく見えるかもね。俺にあるのは借金だけだよ」

 そっか……。このマンションは婚約者のために買ったんだ。そのことを思い出して、雪菜は一気に落ち込んだ。

 エンジンが止まると、ラジオの音も消えて、車内は急に静かになった。

「はい、到着。予想よりも時間かかっちゃったな。疲れた?」

「いえ、全然。すごく楽しかったです。ありがとうございました。課長こそ、ずっと運転していたから疲れましたよね?」

「いや、俺は運転するの、けっこう好きだから平気。それに俺、課長じゃないし」

「え?あ、えっと、そうですね……」

 雪菜はもじもじしながらうつむいた。
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