嫌われ者に恋をしました

 午後は予定通り残りの伝票の確認を終えて、隼人と一緒に備品台帳と金庫の確認に入った。

「この機材は新しいものになっていますね」

「古いのを処分した時の処理が漏れてるな」

 隼人は、記載が漏れていそうな帳票の予想がつくらしく、次々と漏れを拾い出して、雪菜を感心させた。

 でも、逆に見られる立場だったらこんな人、嫌だろうな。粗を見つけ出すのが得意な人なんて。だから酷いことを言われたりもする。雪菜は前に行った営業所の対応の悪さを思い出していた。

 前回の営業所の所長は「本部の世間知らずが暇つぶしで粗探しなんて給料泥棒だな」と言い放ち、雪菜は「まだ花嫁修業はしないのか?」と腰を触られた。完全なセクハラ。そして古過ぎる台詞。

 経理担当のおばさんに資料の場所を尋ねても「忙しいから自分で探して」と相手にしてもらえなかった。探したら、わざと隠すように奥に置いてあったし。

 今回、雪菜は嫌がらせを受けるようなことはなかった。でも、金庫の確認が終わったら、担当者を呼んで講評をする。

 ここの営業所の人たちは、今のところ静かだけれど、それでも少しは文句を言ってくるだろう。雪菜はやっぱり憂鬱だった。
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