嫌われ者に恋をしました

 やっぱり損な役回りなんだ。少し考え込んでしまった雪菜を見て隼人が聞いた。

「今日は大変だった?」

「今日ですか?いいえ、全然。前回の方が大変でした」

「そう?」

「はい、……今回は触られたりしなかったし」

「はあ?」

 隼人が大きな声を出したから、雪菜は驚いて身を引いた。言ってはいけないこと、だったかな。

「あ、いえ。何でもありません」

「前回って去年の中池営業所?触られたのか?何されたんだよ」

「あ、あの。まだ花嫁修業はしないのか?って言われて、その、腰を触られて……」

「そうならそうとすぐ言えよ。セクハラだぞ、それ」

「……すみません」

 隼人はため息をついた。

「嫌じゃなかったのか?」

「……嫌でした」

「嫌なことは嫌って言えよ」

 嫌なことを嫌って言う?言葉にすれば当たり前だけど、雪菜にはとても難しいことのような気がした。うつむいてしまった雪菜を見て、隼人は苛立っているようだった。

「もし次、触られるようなことがあったら必ず言うんだぞ。わかったな?」

「はい」
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