嫌われ者に恋をしました

 隼人は笑顔で雪菜の隣に座ると手を握った。

「そんなに緊張することないよ。ただのうるさいバカな家族だから。たぶん楽しいと思うよ」

「……そう、ですか」

 雪菜は隼人を見上げた。

 隼人さんが一緒ならきっと怖くない。きっと怖くない。繰り返しそう思った。

 でも、やっぱり不安は拭えない。まだ付き合い始めて数日しか経っていないのに実家に行くなんて、どう考えても早過ぎる。隼人さん、どういうつもりなんだろう。

 隼人さんは堅く考えなくていいなんて言っていたけど……。隼人さんの彼女として認めてもらえるんだろうか……。それとも否定されてしまう?どんな言葉で否定されるのかを思うと、お腹が重苦しくなって、だんだん吐き気のような気持ち悪さが支配してきた。

 雪菜があんまり深刻な表情をしていたから、隼人は笑って雪菜の肩に手を置いた。

「そんなに深刻になるなよ。何も心配することなんてないから」

「はあ……。私、どんなことを言われるんでしょうか?」

「どんなこと?」

「私のことなんて……認めてもらえないんじゃないでしょうか……。いきなり追い出されたりなんてしないですか?」

 それを聞いた途端隼人はプッと吹き出した。

「しないしない!そんなわけないよ。そんな心配してたの?」

 隼人は雪菜の心とは真逆の明るい表情をしていた。

「大丈夫!間違いなく大歓迎だから安心して。むしろマズイのは俺の方だよ」

「え?」

「あいつら無神経だから、子どもの頃の恥ずかしい話とか平気でするんだよ。ホント気にしないで」
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