嫌われ者に恋をしました

「不倫なんて、お前サイテーだよ」

　隼人が吐き捨てるように言うと、雪菜は小さい声で答えた。

「……もう、別れましたから」

「いつ？」

「……去年」

「ふーん。でも、お前の中身はそういう不誠実な女ってことだろ？」

「……」

　雪菜は何も答えられなかった。瀬川と一緒にいるのが不誠実なことだなんて、よくわかっていた。本当に後ろめたくて、本当に辛かった。奥さんがどんな気持ちかと思うと、苦しくてたまらなかった。

　瀬川とは外で会うことはなく、雪菜の家でしか会えなかった。でも、捨てられるのが怖くて雪菜は何も文句を言えなかった。それなのに、瀬川はいとも簡単に雪菜から離れていった。思い出すと胸が痛くなる。

　この人はこんな話をするために食事になんて誘ってきたんだろうか。そんなのひどい。

「……こんな話をするために食事に誘ったんですか」

「別に、そういうつもりじゃ、なかったけど。……お前に、人に言われたくないようなことがあるからいけないんだよ」

　顔をそむけながら言う隼人を見て雪菜は、自分だって言われたくないことがあるくせにと思っていた。