嫌われ者に恋をしました

「……でも、やっぱり……言えません」

 雪菜が戸惑っていたから、本当に何か重大な秘密を悠人から聞いたんだと思った。そして、そんな秘密には全く心当たりがなかった。

「何だよ、なに聞いたんだよ?気になるよ」

 隼人の勢いに押されて雪菜は小声でポソッと答えた。

「……隠し場所」

「え?」

「何か隠すなら洋服箪笥のTシャツの下に隠すはずだって」

 それは、エロビデオの隠し場所のことだな。アイツ!本当にくだらないことを。でも、昔の俺と同じと思うなよ。

「隠してる物なんてないよ」

「本当ですか?」

「うん、ライターと一緒に返したから」

「え?返した……?」

「……あれ?」

 首を傾げて訝しげに見上げる雪菜と目が合った。まさか、違う物だった?

「……隼人さんも、そういうの見るんですね。見ても構いませんけど……」

「み、見ないから返したんだよっ!」

「別に返さなくてもよかったのです」

 少しふてくされた様子を見て、雪菜も俺がエロビデオを見るなんて面白くないんだ、と思ったらなんだか嬉しくなった。

「見たかった?」

「ち、違います」

「今度、一緒に見る?」

「いえ!いいです、そんなっ」

 赤くなって首を降る雪菜がかわいかった。世間知らずのこの人は、そんなものは見たこともないんだろう。見たらどんな反応をするんだろうか。見せてみたい。そんなことを思う自分をバカだと思った。

「それで?雪菜は何を隠してると思ったの?」

「えっと、前の彼女さんの写真……」

「そんなのないって言っただろ」

「はい、これでないということがはっきりとわかりました」

「……それは良かった」

 あの時頑張って隠した意味はなくなった。でも、キレイサッパリ開き直って、もう雪菜には何も隠さなくてもいいと思った。
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