嫌われ者に恋をしました

 実は隼人には、一つ気になっていたことがあった。それは、雪菜の母親の墓参り。行こうと言って一度も行っていなかった。

 雪菜の母親の墓は仙台にあるらしい。

 10月は忙しくて行けなかったから、11月の連休を使って仙台に行こう、と隼人は雪菜に提案した。

 雪菜は少し躊躇していたが、しばらく考えてからうなずいた。

 考えてみたら、初めて一緒に行く旅行なのに里帰りになってしまった。初めての旅行なら、もっと別の、定番な旅行先に連れて行ってあげるべきだったのに。

 でも、雪菜は旅行そのものにかなりビビっていて「最初は知っている所がいいです」と謙虚なことを言ってくれた。

 それに最初は躊躇していたものの、だんだん楽しみになってきたらしく、日が近づくと雪菜は持っていく服をあれこれと悩み始めた。

 会社では判断の早い雪菜が、家では優柔不断なことは前から知っていた。

 でも、それ以外にも一緒に住んでみて、わかったことがいくつかあった。

 それも嫌なことに瀬川がつけた癖がいくつか残っていた。夏にうちわで扇いでくれるのもそうだし、ビールを注いで酌をしようとしたり、お酒を作ろうとしたり。そんなことはさすがにやめてもらった。

 あと困っているのは、すごく倹約家なところだろうか。

 俺がちょっと無駄遣いをすると「もう!隼人さんがそんなにいい加減な人だとは思いませんでした」と言って怒る。

 まあ、たいしてやりもしないゲームを買ったりする俺がいけないんだけど。でも「ごめん、雪菜」と言って甘えると、雪菜はだいたい許してくれる。
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