嫌われ者に恋をしました

「雪菜、私とは関わってるじゃん。私は特別なわけ?」

「うん。ミノリちゃんは特別」

「もうっ!私は恋人じゃないんだからさー」

「うん。ミノリちゃんは友達」

「わかってるよ!……雪菜、やっぱりお母さんのこと、気にしてるの?」

「んー……」

 雪菜がうつむいて口ごもってしまったから、美乃里も深く聞くのはやめた。

 雪菜はじっとうつむいて、母親から投げつけられた言葉を思い出していた。

『あんたのせいで私の人生台無しなんだよ!』

『あんたが関わるとロクなことがない!あんたは生きてるだけで迷惑なんだから、人と関わるんじゃないよ!』

 私を産んだせいでお母さんは苦労した。お母さんの言う通り、私が関わるとロクなことがない。瀬川さんのことも後悔した。お母さんの言う通り、人と関わるべきじゃなかったんだ。

「ミノリちゃん、……私と一緒にいて迷惑じゃない?」

「迷惑だったら誘わないよ」

「……うん。……ありがとう」

「人と関わったら迷惑、なんてことはないんだよ、雪菜。それに、人と関わらないで生きていくことなんて、できないんだよ?」

「……うん」

「松田課長って見た目は冷たそうだけど、いい人だと思うよ。雪菜のこと大事にしてくれると思うよ?」

 でも、雪菜は首を振った。

 やっぱりダメ。課長のことは気になる。あの素敵な笑顔も忘れられない。だからこそ、私が関わって課長に迷惑をかけてはいけない。

 課長がそういうつもりで私を誘っているのであれば、もう断らないといけない。

 雪菜は静かに目を閉じた。
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