嫌われ者に恋をしました
「もう誰かと付き合ってるかもしれないし」
「そんな人、いませんから!」
「どうせ、俺は嫌われてるから」
美乃里は盛大にため息をついて首を振った。
「冷酷眼鏡のくせに意外と女々しいんですね。2度や3度フラれたからって一生立ち直れないみたいな顔して。課長、簡単に諦めちゃダメですよ!」
美乃里は豪快にバンバン隼人の肩を叩いた。
「なんだよ、冷酷眼鏡って」
「課長のあだ名です」
なんだよ、それ。どうせ、柴崎がまた面白がって言ったに違いない。それに、俺は女々しくないし。そんなに何度もフラれてないし!
隼人は煙草の煙をフーッと出して、灰皿に火を押し付けた。
「まあ、考えておくよ」
「課長、雪菜はきっと今頃後悔していると思いますよ。課長のお誘い、断ったこと。だから、また誘ってあげてください。でも、泣かせるようなことをしたら、許しませんよ!」
美乃里はビシッと隼人を指さして、ニヤッと笑うと喫煙室を出ていった。
そんなこと言われても、俺はもう既に泣かせてるから。
……でも、……確かに、こんな風にいちいち自嘲すること自体、笠井さんの言う通り女々しいのかもしれない。
もう少し傷が癒えたら、また誘ってみるか。
隼人はため息をつきつつ、少しだけ気分が明るくなったのを感じていた。
アイツ、いい奴かもしれない。