嫌われ者に恋をしました

「もう誰かと付き合ってるかもしれないし」

「そんな人、いませんから!」

「どうせ、俺は嫌われてるから」

 美乃里は盛大にため息をついて首を振った。

「冷酷眼鏡のくせに意外と女々しいんですね。2度や3度フラれたからって一生立ち直れないみたいな顔して。課長、簡単に諦めちゃダメですよ!」

 美乃里は豪快にバンバン隼人の肩を叩いた。

「なんだよ、冷酷眼鏡って」

「課長のあだ名です」

 なんだよ、それ。どうせ、柴崎がまた面白がって言ったに違いない。それに、俺は女々しくないし。そんなに何度もフラれてないし!

 隼人は煙草の煙をフーッと出して、灰皿に火を押し付けた。

「まあ、考えておくよ」

「課長、雪菜はきっと今頃後悔していると思いますよ。課長のお誘い、断ったこと。だから、また誘ってあげてください。でも、泣かせるようなことをしたら、許しませんよ!」

 美乃里はビシッと隼人を指さして、ニヤッと笑うと喫煙室を出ていった。

 そんなこと言われても、俺はもう既に泣かせてるから。

 ……でも、……確かに、こんな風にいちいち自嘲すること自体、笠井さんの言う通り女々しいのかもしれない。

 もう少し傷が癒えたら、また誘ってみるか。

 隼人はため息をつきつつ、少しだけ気分が明るくなったのを感じていた。

 アイツ、いい奴かもしれない。
< 80 / 409 >

この作品をシェア

pagetop