近未来少年少女



おふくろはもう誤魔化せないと思ったのか、俺と同じソファーに腰掛けた


『なんで急に10年前の事が聞きたくなったの?』

落ち着いた口調で俺に問いかける


『知りたいから……。
俺は俺の全部が知りたい』

その言葉を聞いて、おふくろは俺の想像を越える事を口にした


『あんたが居なくなっちゃうと思ったから』


『え?』


『思い出したらユウキは絶対……お母さんじゃなくてあの人を選ぶと思ったから』


な、なにを言ってるんだ?


俺が居なくなる……?
あの人を選ぶ…………?

全然話しが見えないんだけど……

おふくろはゆっくりと時間を巻き戻すかのように、10年前の事を話し始めた

それは俺にとって衝撃的な事で…………


10年前忘れてしまっていた記憶はミノルだけじゃない

もう一人


俺にとって大切だった人の記憶、それが今明かされようとしていた


その後、淡々と語るおふくろの横で俺は熱い何かが溢れ出していた

胸のずっとずっと奥、引っ掛かっていた何かがゆっくりとほどけてゆく


そう……10年前の記憶、ミノルとは違う

父親との記憶がー……

……………………
……………

……………………



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