近未来少年少女


俺の言葉にミノルはホッとしたような顔を見せた

『前に一度だけ見せてくれたよね。……またやってくれる?』

初めてミノルに会った日に俺は何気なくリフティングした事を思い出した

ちゃんと覚えてたんだ…

最近やってないから続かないかもしれないけど……


俺はボールをひょいっと投げ、それを背中で受け止めた

そして次にヘディング、右足、左足へと移動させていく


一度見ているはずのミノルはやっぱり目を輝かせて“すごい”と言った


俺はさりげなくミノルをベンチに座らせ、リフティングをやり続けた


『……僕にもできないかな…?』

微かに聞こえたミノルの声

リフティングはすぐに出来るものではない

コツさえ掴めれば多少形にはなるかもしれないけど…
“リフティング”と言えるようになるまでは相当練習しないと無理だ

だけど俺はミノルに“無理”と言いたくなかった


あいつが“やりたい”と思うものをやらせてあげたかったから…

好きなサッカーを一緒に“楽しいね”って言いながらやりたかったから……


ただ……ただ、それだけだったのに……………



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