キスなんて贅沢はいらないから
夜、ベットに入ったらすぐに眠りについてしまった。

夢を見た。

お兄ちゃんが私だけのものじゃなくなってしまった夢。

お兄ちゃんは私の知らない女の子と楽しそうに笑ってて、

相合い傘をしていた。

ピンクの傘。

昨日玄関で見た、憎らしくておぞましい傘。

すごく怖かった。

お兄ちゃんは私には見せないような、愛しい目で女の子を見つめているんだ。

私はお兄ちゃんを追いかけて肩を揺さぶろうとしたら、手が透けて、

触れることはできなかった。

二人だけの世界。

そんな感じだった。

きっと私はお兄ちゃんに忘れられて、もう見捨てられたんだ。

そう思ったら、涙がぼろぼろ溢れて止まらなかった。

そうしているうちにも、二人は私から遠ざかっていく。

待って、待って、私のお兄ちゃんを奪わないで。

私にはお兄ちゃんしかいないのに。
















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