キスなんて贅沢はいらないから
「いろはは学校楽しい?」

急に返答に困ることを聞かれてドキリと心臓が震えた。

「急にどうしたの?」

言葉に詰まりそうになりながら、若干早口で私は聞き返す。

「なんとなく。日曜日なのにいつも家に居るなと思って。」

それは友達と遊びに行かないのか、ということなのかな。

だったらそれは・・・。

「外は行かないよ。だって日曜日は休みたいの。疲れてるの。」

最も無難でいい答えでしょう?

友達は今のクラスにはいないなんて、口が裂けても言いたくない。

「学校は普通。友達はみんな日曜日も部活なんだ。大変だよね。」

「ふうん。いろはから学校のこと聞かないから心配だったんだけど。

ちょっと安心した。」

お兄ちゃん心配してたんだ。

まあ、毎日帰ってきて一言も学校のことを言わないのはおかしいか。

私が中学校に入ってから一度も、

学校であったいい報告なんてしたことなかったもんね。

本当に私の親みたい。

隠してても、学校でうまくいってないことばれちゃいそうだな。

もうばれてるか。

安心した何て言ってるけど、不安なんでしょう?

本当は分かってるんでしょう?

だってお兄ちゃんの眉は下がったままだし、納得のいかないような顔してる。

「・・・別に大丈夫だから。お兄ちゃんは勉強に集中すればいいよ。」

残念な妹でごめんね。

でも、自分でどうしてこうなってしまったのか分からない。

どうしてそんな状況が平気になってしまったのか分からない。







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