キスなんて贅沢はいらないから
昼御飯はあっという間に食べ終わってしまった。

誰とも会話を交わさない昼休みは悠々と過ぎていく。

空に浮かぶ雲がゆっくりと動いているのを眺めていた。

「あの。ちょっといい?」

見知らぬ声と同時に、肩に手を置かれた。

「わわっ。」

急なことに声が裏返りそうになった。

学校で話しかけられるなんて滅多にないことだから。

「えっと・・・。三上さんだよね?」

声の主は困ったように髪の襟足を触りながら片手を差し出した。

「これ、君のだよね。」

彼の手の平には『三上いろは』と記された名札が乗っていた。

「あ、ああ・・・うん。」

「廊下に落ちてた。」

「そうなんだ・・・。ありがとう。」







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