キスなんて贅沢はいらないから
授業中も彼のことが頭から離れなかった。

地味で誰にも相手にされない私に話しかけてくれた。

それは偶然だけど、でもすごく嬉しくて。

学校なんてどうでもいいと思ってたはずなのに。

「今日ね、お兄ちゃんに似てる人がいたんだ。」

晩御飯を食べている途中、私はそのことを話した。

「へえ。顔が?」

「ううん・・・。よく分からないけど、なんだかそう思ったの。」

「ええ、具体的には?」

顔や容姿はお互いに整っていて綺麗だけど、

タイプとかそんなものが違うと思う。

だったら何が?

「笑顔かな・・・。雰囲気というか。笑ったときの空気が、似てる。」

「分かりにくいな。」

お兄ちゃんは苦笑いする。

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