今夜、きみの手に触れさせて


律ちゃんとの待ち合わせは、神社の横のカフェの前。




「青依―!」


日も暮れ始めて混雑しだした人波からはずれて、律ちゃんが手を振りながら駆けてきた。




「わー、律ちゃんキレイ!」




律ちゃんの浴衣は、白地に紫系の花模様。


一番大きな花の色と同じ赤紫の帯がキュッと結ばれている。


アップにした髪が、しっとりと女らしさを際立たせていた。




「素敵……!」


「青依もすんごい可愛いよ」


と、ほめ合う。へへ。




そのまま鳥居をくぐり、参道を行く。


石畳の両脇には、ずらりと露店が並んでいた。




今日は昼間から、子供みこしと祭囃子の山車が町中を練り歩き、賑やかだった。


今も遠くから、笛や太鼓の音が聞こえてくる。


どこか懐かしいような音色。


境内に停めた山車の上で、お囃子保存会のおじさん達が毎年熱心に奏でてくれるんだ。




大きなお祭りではないけれど、


小さな町の一大イベント。



だから今日は塾も休講です!


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