軟派な王子様【完結】
もう時刻は10時半。


半分は諦めてる。
短気な翔が待ってる訳無い。


知ってるのに…



会いたいと思ってしまう自分が悔しくて…。

本当に私のことが好きなのかもわからないのに…



雨は暗い空をもっともっと暗くした。



神社が見えた。

電気の明かりが一つしかない神社は、肉眼ではあまり周りが見えない。

最後の力で階段を駆け上がった。

太く長い大きな古い御神木。

その前に微かに見える背の高い人影。


この雨の中、傘の影が見えない。

「翔…。」

それは雨に濡れ、体を震わせている翔だった。



浴衣はすっかりはだけて、裾も肩もビチョビチョになっている。

私はそんな状態を気にする事なく翔の方に近寄っていった。


何も言わない翔にもう一度声をかける。


「翔…??」


翔はポケットに手を突っ込んだまま、こちらをポーッとした表情のまま見つめていた。

そして…


瞬間…

私の体は引き寄せられた。
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