軟派な王子様【完結】
「あたしの父親さ、酒飲みでさー。しょっちゅうお母さんのこと殴ってたんだ。あたしそれが悔しくてさ。ある日その父親が言ったの。゙女なんざ男の欲望を満たすための道具にすぎねー"って…。」

私は香織の見つめるドーナッツ雲に手を伸ばす。


「小学生になるとますます父親の暴力は激しくなって、とうとう私にまで手をあげるようになったの。その時、あいつはこうも言ったわ。゙女が弱い生き物でよかった。"って。」



香織は黙って私の話を聞いていた。


そして私の手をぎゅっと握った。

とても悲しい顔をしていた。



「辛かったね。」


香織の目が少しだけ潤んでいた。


「でもさ、一姫。きっと一姫にはいい男の人が現れるよ。世の中の男が全員そんなやつってわけじゃないんだからさ。」


香織は私を励ますため、前に進ませるために言ってくれたんだと思う。

本当は感謝しなきゃいけないのかもしれない。

でもなんだかやっぱり納得いかなくて、素直に頷けない自分がいた。


「う…うん…。」


その時、チャイムがなった。

「やば!!次実験だよ!!」


あたしが…間違ってるのかな…。


んーん。


男なんか…


大嫌い…。
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