軟派な王子様【完結】
あぁ…香織に何を言っても無駄だ。


私で完全に楽しんでる…。






私はまだ冷やかす香織と一緒にうんざりしながら音楽室へ向かう。


今日も放課後練習が待っている。






音楽室へ入ろうとしたその時だった。

「遠藤さん。」


優しく穏やかな声がした。

私はその声に引き付けられるように振り向いた。




そこには、同じクラスの昇君が立っていた。
昇君は小さく微笑んだまま、楽譜を私に手渡した。



「これ、今度のコンサートの楽譜。皆のも全部コピーしといたんだ。遠藤さん、とっても忙しそうだったから。」


昇君はとても頭がよく、クラスでは一目置かれるほど気遣いが出来、優しい人だ。

そしてさわやかな笑顔と、きちんと着る制服に女子は一度は昇君のことを好きになっていた。
しかし、決して高ぶらず、いつでも冷静でとても親切だ。




「ありがとう。これからやろうと思ってたところだったから助かったよ。」




私は心からの感謝を込めて昇君に御礼をいった。

昇君はまたふっと微笑んで首を振る。


「いいえ。遠藤さん、すごく頑張ってるから、僕も何か役に立ちたいんだ。何かあったら言ってほしい。」
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