軟派な王子様【完結】
「昇君。」


俯く昇君に私は言った。

素直な気持ち。



「好きになってくれて、ありがとう。」





返事は出せない。

それはきっと自分が昇君のことを好きってわけじゃないからだと思う。


でも…こんなに真剣に、こんなに律義に私のことを想ってくれてると思っただけで、とっても嬉しくなった。


だからこそ、中途半端な気持ちを伝えられない。


感謝さえ生まれた。

こんな誠実な人きっと他にいないだろうな。



「うん。」



昇君はまた照れた顔をして笑って頷いた。







夕日が半分落ちかかり、夜のマントをかけ始めていた。
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