憂鬱なソネット
寅吉とは思えないほどにはきはきとした口調で吐かれる愛の言葉。




あたしの心臓は、遅ればせながらどきどきしてきた。





「結婚してください」




「…………」




「結婚してくだ」




「……あーもう、分かった分かった!」





あたしはとうとう根負けした。




その瞬間、寅吉の顔がぱっと輝く。





あぁ、この笑顔、好きなんだよね……….。






「ーーーあやめさんっ!」




「きゃっ!?」





寅吉が勢いよく抱きついてくる。




バランスを崩したあたしは、どさりと地面に転がった。




寅吉もよろめいて、あたしの上に落ちてくる。






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