憂鬱なソネット
「………だって別に、特に予定もないから、仕事終わって普通に帰って来ただけ」





「え……っ」






お母さんがショックを受けたように口許を手で覆った。






「と、寅吉くんと会わないの!?」





「会わないよ」





「なんで……えっ、別れちゃった!?」





「別れてないけど会わないの!!」





「……………」





「……………」






お父さんとお母さんは目を丸くして顔を見合わせた。





恋人のいる娘は、今日は当然帰らないものと思っていたんだろう。






「………えーと、晩ご飯は?」





「まだ」





「あらまぁ……私たち、もう食べちゃったのよ」





「いいよ、別に。

残り物、一人で食べるから」





「………何も残ってないのよ」





「えっ、うっそ!」






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