memory
「おそかったわね。てっきり、家出したのかと思った。」
「そんなわけないでしょ。」
ふと時計の針を見た。時計はもう10時をすぎていた。
「ニャー。ニャー…」
足元に目を落とすと、ネコというやつが何故か僕の足にすりついていた。
「ちょっと、母さん。これは何。」
「可愛いでしょ~。あんたがいない間に一目惚れしちゃって、親せきのところからもらってきたのよ。」
つぶらな瞳はこちらを見つめて、「ニャー」と鳴いた。

「名前は、ナナカっていうのよ。」
「……え?なんて?」
「ナナカ。親せきがそう呼んでたわ。」
目を丸くして、子猫をマジマジと見つめた。
つぶらな瞳は可愛いが悪戯そうに笑っているように見えなくもない。

「確かに絶対会えるって言ってたけどさ……いくらなんでも早すぎるよ。」
上目づかいでこっちを見て鳴くナナカに微笑む。

明日から学校が始まる。僕の短い夏休みは、
後2時間で、幕を閉じる。―完。
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