たとえばアナタと恋をして
振り返ると晃が大きなファイルと鞄を抱えて立っている。

「なにしてんの?」


「……散歩」


「…泣きながら?」


「…………」


慌てて涙を拭う。


「大丈夫か?」


こんなタイミングで現れる辺りも、晃ならではの、能力のような気がしてしまう。


「だいじょ……」


「いや、全然大丈夫そうに見えねー」


「全然だいじ……」


「とりあえず車乗りな」


晃が促した方向には、ボディにでかでかと社名の入った営業車。


……キメキメの台詞とのギャップに、思わずプッと吹き出してしまう。


「お前今ダセーとか思ったろ」


晃も楽しそうに笑う。


「とりあえず乗っとけ」


「怒られるんじゃないの??」


「顧客のニーズにお答えするのが、我が社のつとめです」


「何キリッとしてんのよ…………ありがと」



晃と二人、営業車に乗り込む。


< 45 / 204 >

この作品をシェア

pagetop