愛してるの一言で。




ふつふつと込み上げてくる怒りに
拳が震える。



「お前に何がわかんだよ....」



気づけば伸也を真っ直ぐに睨み
重々しい空気に包まれる俺達は
ただひたすら睨み合っていた。



「あ?」



俺のぼそりと呟いた一言が
聞こえなかったらしく
ヤンキーらしい聞き返し方。



「....お前に何がわかんだよって言ってんだ!!」



俺の一声でシンと静まり返ったかのように
俺の耳にはTVの音も
外で騒ぐ人々の声も
伸也の息遣い....いや自分の息遣いさえも
遠く遠く....聞こえなくなっていく。


「....」

「....」



俺は伸也からの一発がくると
一応身を固くしていたが
伸也は動かない。

喧嘩っ早い伸也は
珍しく拳も握り締めていなかった。

だが、瞳からは物凄い怒りを表しているのが分かった。
伸也を取り巻くオーラは異常に同い年とは
思えないくらいに恐ろしかった。




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