絶対王子は、ご機嫌ななめ

思ってるも何も、政宗さん『脚見せてみろ』って言ったじゃない。何かしようと思ったから、そう言ったんじゃないの?

あれ? でも政宗さん、『何か勘違いしてるだろ?』って言ったよね。

パジャマのズボンをはいている自分の脚を見て、『何が勘違い?』と首をひねる。

とくに変わったことはないと思うけれど……。

「キズだよ」

「え?」

突如耳に届いた声に顔を上げると、ソファーに座っている私の前で政宗さんが跪いている。そしてその手には、消毒液と脱脂綿。

ひとり考え込んでいて政宗さんの存在に気づかなかった私は、可笑しくもないのにその場を取り繕うかのように笑ってみせた。

「なんですか、それ?」

「転んだ時にできたキズ。手当してやるから、早く脚出せ」

「ああ……」

そういうこと……。だから『脚、見せてみろ』って言ったのね。なのに私ったら、ひとりで変な妄想繰り広げちゃって、むちゃくちゃ恥ずかしいじゃない……。

赤くなっているであろう顔を両手で隠してみる。今更そんなことをしても無駄だと分かっているのに、そうでもしないといたたまれない。

それにしても、政宗さんも政宗さんだ。キズの手当してくれるなら、最初からそう言ってくれればいいのに。遠回しに『脚、見せてみろ』なんていうから、あらぬ妄想をしちゃたじゃない!



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