絶対王子は、ご機嫌ななめ
最終章

  気持ちを伝えたくて…


コースに出ると、目に鮮やかな新緑が目に飛び込んでくる。

清々しい空気に深呼吸してから10番ホールのティーグラウンド(各コースの出発区域)に目を向けると、もう一組目のグループが出てきていた。

政宗さんがラウンドするグループは三組目。「もうどこかで練習してるかも」と智之さんが言うから、キョロキョロと探してみると……。

「……いた」

一般ギャラリーは入ることのできない練習用のグリーン(ゴルフボールをカップインするところ)で、パターの練習をしている政宗さんを見つけた。

久しぶりに見る政宗さんは、今まで見たことのないような真剣な眼差しをしている。

……って、別にいつもが真剣じゃないと言ってるわけじゃなくて!

心の中の声なんて政宗さんに聞こえるわけじゃないのに、なぜだか言い訳してる自分が虚しい。

でもどんな政宗さんでも、政宗さん欠乏症になっていた私に十分な潤いを与えてくれる。

しばらく遠くから、こっそりと眺めていよう。

だから見つからないようにとギャラリーに紛れ込んでいたのに、何を思ったのか智之さんが政宗さんに向って声を掛けてしまった。



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